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熊本県天草市﨑津|留学体験談

2023年6月、私(父)と息子の親子2人で熊本県天草市﨑津へ1週間の保育園留学に行ってきました。私は普段夜遅くまで仕事をしており育児にあまり参加できていなかったため、息子と2人でじっくり向き合う機会がほしい、そして私たちが不在になることで妻に自由な時間を過ごしてもらえたらと思い、保育園留学への参加を決めました。
 
息子に父と2人だけで行くことを伝えると、「カカ(お母さん)も一緒に行きたい」と最初は嫌がっていましたが、私と外でたくさん遊べるという嬉しさもあったようで、徐々に乗り気に。さらに、乗り物好きな息子に飛行機に乗れることを伝えるとワクワクして、留学を楽しみにしてくれるようになりました。
 
保育園留学は日曜日から開始でしたが、友人宅に1泊することにしたので、土曜日に出発しました。出雲空港から飛行機で福岡空港まで行き、その日は友人宅に宿泊。日曜日は博多駅から新幹線で熊本駅に行き、その後はレンタカーで2時間半かけて﨑津へ。道中、息子はさまざまな乗り物に乗れたことや私とゆっくり過ごせたことがうれしかったのか、たくさんの笑顔を見せてくれました。
初めての父と息子2人での生活。私たちはこの留学生活における約束を3つ交わしました。1つ目はたくさん遊ぶこと、2つ目はたくさん食べること、3つ目は早く寝て早く起きること。それを守りながら思いっきり﨑津での生活を楽しもうと2人で誓い合い、男2人の生活がスタートしました。


初体験がたくさんの﨑津保育園での生活

日曜日の15時に﨑津に到着し、早速、宿泊施設「崎津ハウスTAMA」から歩いて3分のところにある留学先「﨑津保育園」を下見しに向かいました。すると、いつも通っている保育園の3倍ほどの園庭があり、息子はうれしくて遊具で思いっきり遊んでいました。﨑津は漁師町なので猫がたくさんいましたし、自然豊かな土地なので虫もいて、少し怖がりながらも楽しそうにしていました。
最初の登園日、保育園の園児たちや先生方が外に出て歓迎してくれたそうですが、息子は人見知りな性格なので恥ずかしがっていたようです。
 
初日の午前中は先生と2人で過ごしたようですが、徐々に環境に慣れ、お友達もできていました。﨑津保育園は定員30名の小さな園のため、年齢別にクラス分けされているのではなく、3歳から5歳までの子どもが一緒のクラスで過ごすという縦割り保育。そのため、普段通っている保育園とは違った形で子供同士コミュニケーションをとることができて、良い経験になったようです。
また、地元の保育園ではあまり経験しないサッカーや、どろんこ遊びも思いっきり楽しんだようで、洗濯物の汚れがその楽しさを物語っていました(笑)
 
そんな息子の非日常を、先生方が連絡帳1ページにびっしり書いてくれて、それを見ることが毎日の楽しみでした。保育園は朝から夕方までまで1日の大半を過ごす場所なので、息子の様子を丁寧に教えてもらえてとてもありがたかったですし、その日の夜の息子との会話にもつながりました。毎日夕方に私が迎えに行くと喜んでくれて、日ごとに息子との絆が深まっていくことがとてもうれしかったです。


﨑津ならではの海のある暮らし

1週間滞在した宿は、4LDKの一軒家。普段住んでいるマンションよりも広かったので、息子はトイレに行くことに怖がり、一緒に行きました(笑)
 
最初の夕飯は息子のリクエストで、初めて親子2人で一緒にカレーを作りました。いつもは小食な息子ですが、一緒に買い物や料理したことが嬉しかったからか、おいしいと言いながらたくさん食べてくれました。滞在中は基本的に自炊をし、近所で購入ができる海沿いならではの魚の干物といったご当地食材も楽しみました。
 
お風呂はもちろん宿にあったのですが、私と息子は温泉好きなので、車で10分ほどの公共浴場や車で30分ほどにある「下田温泉」など、毎日通いました。
息子は約束の3つ目の「早く寝て早く起きること」もしっかり守り、毎日9時くらいに寝て、6時半に起床。8時半の登園までの時間を利用して、世界遺産の「﨑津教会」や海まで散歩を楽しみました。
家から﨑津教会までは約650メートル。歩いて10分ほどなので親子で気軽に行くことができます。水やジュースを買って海沿いで一緒に飲みながら、たくさん話ができました。
 
私もリモートワークの息抜きに海沿いを散歩してリフレッシュ。普段は日々遅くまで仕事をしている私ですが、﨑津での保育園留学期間は17時から息子とずっと一緒に過ごす生活の中で息子の成長を感じることができました。

地域の一員として受け入れてもらえる喜び
﨑津は小さな集落で、近隣に飲食店が3軒ほどしかないこぢんまりとした地域。一見地味に見えるかもしれませんが、コミュニティが小規模な分、人と人の距離がとても近く、住む人たちがとても温かく、皆さん優しいと感じました。1週間だけの滞在でしたが、ある日は家に野菜を差し入れしてくれた方がいたり、声をかけてくれる人がいたりと、心温まるコミュニケーションがたくさん生まれました。
 
人口が多い土地ではその土地にどのような人が住んでいるか興味がわきづらいものですが、小規模な土地では全員が大切な仲間という認識があるようです。地域の方に見守ってもらい、大切にしていただいていると感じ、とてもあたたかい気持ちになりました。

父子2人だからこそ﨑津を満喫
「週の真ん中の水曜日までがんばったら一緒にご褒美をしよう!」と2人で決め、水曜日の保育園が終わると、車で約40分の距離にある大型ショッピングセンターに行き、2人でカラフルなアイスやフライドポテトを食べました。一緒にがんばった打ち上げという感じで、いい思い出になりました。
 
熊本や長崎といえば、ちゃんぽん!ということで、滞在中2~3日ちゃんぽんを食べに行きました。鶏ガラや豚骨、魚介を合わせたダシを、醤油や塩で調味したあっさりスープでいただく「天草ちゃんぽん」。長崎から海を越えてきた料理人が、長崎ちゃんぽんの技に天草の食材を加えてアレンジしたのが始まりのようです。麺が見えなくなるほどの野菜にすり身の蒲鉾やちくわ、魚介がしっかりのっていて、一度食べれば、やみつきになる味。息子はこの1週間でちゃんぽん大好き少年になりました!
 
また、最終日は早めにチェックアウトし「道の駅 天草市 イルカセンター」へ。船に乗ってイルカの群れがいるところまで行ってイルカウォッチングをするのですが、息子は船に乗れること、そして100頭以上のイルカの群れにテンションが上がっていて、﨑津に息子を連れてくることができて良かったと改めて思いました。

﨑津を選んで良かった
私が留学先として﨑津を選んだのは、かつて仕事で長崎に住んでいたことがあり、九州の温暖な気候や住む人たちの人柄の温かさに大きな魅力を感じていたからです。そのような素晴らしい場所に愛する息子と行けたらと思って決めたのですが、正直に言うと、全国に多数保育園留学先候補がある中で﨑津にして良かったのかと考えることもありました。それは、他地域の保育園の方がホームページが充実していてキラキラして見えたり、生活の利便性が良かったりするのかなと思ったからです。
 
しかし、いざ現地に行ってみると、ネット上では知ることができない魅力がたくさんある土地でした。県外から来た私たち親子を温かく迎えてくださる方がたくさんいて、子どもも大人も楽しめる自然環境や温泉もあり、そして、少し車を走らせればスーパーや飲食店など地域のおいしい食事も楽しめる﨑津。帰ってきた今、「﨑津に行ってよかった」という気持ちがじわじわとこみ上げてきます。
田舎ではあるものの、都市部にもアクセスが良く、子育てにちょうど良い環境でした。1週間という短い期間でしたが、ここでしかできない体験を通して、子どもも自分自身も一回り大きく成長したように思います。﨑津が私たちにとって特別な場所になりましたので、今度は土日も滞在して、1日フリーで楽しみ尽くしたいです。
 
取材・執筆:堀 綾乃